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コスタリカ

現地レポート2017[政治]国会訪問で知った日本と違いすぎるシステム

2017.2.8

コスタリカ国会議長、日本の9条バッジを胸につける

国会議長と日本の市民が平和憲法で意気投合
コスタリカは2年前、「平和憲法を長年保ってきた日本、コスタリカ両国民にノーベル平和賞を授与させよ」という満場一致の国会決議をあげてノーベル委員会に送りました。今回の私たちのコスタリカ訪問3日目のハイライトは、国会を訪れて決議を実現させた国会議長、議員と会見したことです。

国会の記者会見室に招かれました。正面の席についたのはゴンサロ・ラミレス議長(右)とオットン・ソリス議員です。議長は2年前とは違っていますが、国会を代表して会見に臨んでくれました。ソリス議員は政権与党である市民行動党の創立者で、この人こそ国会決議を実現する中心になった人です。
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僕が司会役となり、まず僕から今回の訪問の趣旨と9条が危うい日本の状況をお話しました。次いで、「憲法9条にノーベル平和賞を!」のメンバーである神奈川県の羽生田友貴さんが国会決議への感謝と連帯のアピール文を読み上げました。さらに、コスタリカの決議に至る橋渡し役をした東京の遠峰喜代子さんが経緯を語りました。
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そのあとはプレゼントです。議長には憲法9条を染め抜いた布を、ソリス議員には日本の風景のカレンダーをお贈りしました。羽生田さんは9条の缶バッジ100個を議長に贈りました。

ラミレス議長はさっそくバッジを胸に着け「国会議員57人を代表して皆さんを歓迎します。コスタリカ国民は全員、平和の価値観を持っています、政党はいろいろありますが平和の価値観では共通しています。私たちは平和を輸出しようと考えています。平和に向けて協力していきましょう」と語りました。

ソリス議員もバッジを胸に「魂の底に響く深い言葉をいただきました。平和の価値観を共有する人々を迎えてうれしく思います。キヨコ(遠峰さん)から、政府でなく国民にノーベル平和賞をという日本の運動を聞き、素晴らしいアイデアだと思いました。妻に話したら『コスタリカ国民もいっしょに平和賞を受ければ』と言われ、両国民にノーベル平和賞をという国会決議の案が生まれました。すべての議員が賛成してくれました」と話します。

さらに「コスタリカと日本はとても異なった国です。異なった国が同じ価値観を共有できるということは世界のどの国も共有できるということです。世界で最も経済発展した日本と世界で最も民主主義が発展したコスタリカが、いずれも軍隊をなくした憲法のおかげで発展できたことを世界に知らしめれば、軍事力を持たなくてもいいのだと他の国の人々に思わせることができます」と説きました。

議長が退席したあと、ソリス議員は政治的な条件をつけない日本の援助への感謝や、コスタリカのエネルギーの99%が自然エネルギーであることについて語りました。最後に、ノーベル賞に向けての決議をあげたため日本大使館との関係が一時ぎくしゃくしたことも。国民より政権を向いた日本大使館の役人にとって、コスタリカの国会決議は気に入らなかったようです。

日本と違いすぎる国会議員の見識・待遇・選出ルール

国会議長、ソリス議員との会見のあと、国会の議場に入って広報官の説明を聞きました。

正面には議長席があり、コの字型に議席が取り囲みます。日本のように大臣が議員を見下ろすようなしつらえではなく、全員がお互いの顔を見ながら議論するためです。「どの席でもご自由にお座りください」と言うので、僕は議長席に座りました。訪問団のみなさんも好きな議席に座りました。
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国会は一院制です。議員は57人で、うち女性が20人います。女性の政治進出が進むようにクオータ制(割当制)が敷かれ、政党は候補者名簿の40%以上を女性にしなければなりません。議席の一つに車いすのマークがついています。中南米で初めて誕生した全盲議員の席です。横にアシスタント用の補助席があります。

日本のような小選挙区制ではなく、完全比例代表制です。任期は4年で、連続再選はできません。いったん議員になったら、次の選挙には立候補できないのです。権力にしがみつく者をなくすための仕組みです。ちなみに大統領も一度なったら次の8年はなれません。独裁者をつくらないためです。国会議長は毎年5月に代わります。毎回、全議員の選挙で選ばれるのです。

議員の月給は7000ドル、約80万円です。かつては4年ごとに給料が自動的に上がっていましたが、今は凍結されています。ちなみに隣のパナマは12000ドル、ニカラグアは9000ドルですから、この地域でも格安です。政治家と一般市民との収入の格差を大きくしないという発想からです。

議場の奥にドアがあって、議員はそこでコーヒーを飲めます。しかし、あまり長く休んでいることはできません。議場にいない時間は給料から差し引かれます。議場はガラス張りで、議席からほんの2メートル離れたガラス壁の外で市民が傍聴できます。プラカードでも旗でも、傍聴者は何でも持参できます。議場は丸見えだし討論はマイクで外に流されます。議員の発言に怒った傍聴者がガラスをたたいたため、ガラスのあちこちにひびが入っています。
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憲法を変えるには、少なくとも3回の議論が必要です。うち少なくとも一回は現在の政権でなく別の政権に移ってから行われる必要があります。一つの政権がどさくさに紛れて憲法を変えることはできないのです。

すでに1974年から選挙権は18歳以上です。小さいころから投票に慣れるため、4年に一度の大統領、国会議員選挙のたびに子どもの模擬投票を実施します。高校生が選挙管理委員会を代行し、地域の幼児以上の子どもたちが投票します。単に形をまねるのではなく、だれが大統領にふさわしいか、子ども自身が考えて投票します。そのために子ども同士や家庭で親と子が政治について討論をします。こうして小さいころから民主主義を体で身に着けるのです。

聞けば聞くほど、うちの国とはまるで違うなあ、と思いませんか?

「コスタリカ方式」など存在しない(念のため)

ちなみに日本に「コスタリカ方式」という言葉があります。自民党の選挙戦術で、候補者を小選挙区と比例区から別々に立候補させて選挙ごとに入れ替える仕組みです。かつてコスタリカでは2大政党が選挙ごとに政権を交代していたことから思いついた名前だと言いますが、小選挙区がないコスタリカには「コスタリカ方式」なんてありませんよ。

コスタリカ国会の広報官は「ええ、そんな制度が日本にあるのは知っていますが、首をひねりますね」と苦笑していました。コスタリカ人も首をかしげるコスタリカ方式という言葉を作ったのは、オリンピック組織委員会の会長をやってヒンシュクをかっている、あの元首相です。
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