コスタリカ
現地レポート2019❻ 聞いてびっくり憲法改正のルール
2019.1.28
市民の提案を立法化する「市民参加課」
国会で僕たちを案内してくれたのは議会事務局の「市民参加課」の職員でした。アフリカ系の方です。そういえばコスタリカの今の副大統領もアフリカ系の女性です。コスタリカは「白人国家」と言われてきましたが、アフリカ系の人々も進出しています。
さて、日本では聞き慣れない「市民参加課」とは何でしょうか?
三権分立を明記したコスタリカ憲法第9条は同時に、権力が国民にあることを示しています。政治は市民の参加で作りあげるという発想です。市民が提案した法案が国会で審議され、新たな法律となることもあります。たとえば――。
小学校でコスタリカの海の生物を学んださい、一人の女の子がマナティを調べて授業で研究発表しました。それを聞いた同級生の男の子が3年生の授業で国のシンボルについて学んだことを思い出しました。彼は「マナティは希少動物なのだから、コスタリカのシンボルにしよう」と考え、二人でそのアイデアを国会の市民参加課に持ち込みました。職員や議員がそれを具体的な法案にし、国会で審議されて法律になったのです。この小学生はいま、大学生になっています。
市民が法律を作ろうと思えば、有権者の5%、今なら約16万人の署名を集めると国会で審議される権利が生まれます。国会議員だれか一人を通じて国会に法案を提出し、審議されます。
もちろん、ふだんは議員が法案を出します。多数決で採択されると、いったん憲法裁判所に送られ、憲法にかなっているかどうか審査されます。合憲だと認められると、もう一度、国会で審議され直します。再度、可決したら大統領の署名を得て法律として成立します。どんな法案も2回審議されるのです。
日本人が驚く憲法改正のルール
憲法改正の場合は3回の審議が必要です。しかも1つの政権の下で可決しただけではダメ。4年後の大統領選で新たな政権、新たな議員となってから、最初から審議をやり直すのです。ちなみにコスタリカでは大統領も議員も、2期続けて立候補することはできません。だから、完全に別の人々が審議し直すことになります。
ここが肝心です。コスタリカでは国会議員になったら、次の選挙では立候補できません。1期4年、間を置かなければならないのです。大統領は、以前は一度なったら2度はなれませんでした。今は2期8年の間をおけば、もう一度立候補できる仕組みです。権力者をつくらないためにこんな仕組みをつくったのです。これこそ、日本に取り入れたいと、思いませんか?
議場に隣接した記者席で、こうした説明を受けました。記者席にたまたま国営テレビ放送「13チャンネル」の記者がいました。「国営だからといって、与党の意向を報道するわけじゃない」ということです。これもNHKに見習ってほしいなあ。
写真=違憲審査をする憲法裁判所